建築ご用心     AIU Planners 

建築を美しく造る5箇条

5箇条
1 簡潔な構造
2 自然な流れ
3 これ見よがしの排除
4 環境状況への適応
5 意の込もった造り



簡潔な構造
 外力に対して最も効率よく耐える構造はおよそ簡単で美しいものです。1000年の風雨に耐える大樹の、夏冬と年を重ねた構造を見るとまことに美しいですね。建築においても、簡単で筋の通った構造が丈夫で美しいものです。和では法隆寺がまず美しい。ミース・ファン・デア・ローエの柱・梁そのままの美しさは味わい尽くすことがありません。F.L.ライト住宅の柱列も美しい。木造では白井晟一の呉羽の舎が美しい。いずれも、簡明なリズム合理的な骨組の配置があります。

自然な流れ
 社会・時代・時間大自然環境の流れを観察して、どのように流れているかを感じ取ることによって、流れに乗ることができます。自然の流れに乗った建築は美しいものです。建築の予定があるならマクロに眺め、よく観察をし何度も吟味をして自然の流れに乗るのがよろしい。新鮮な乗り方が見つかるかも知れません。

れ見よがしの排除
 建築に、大袈裟でこれはどうだという
これ見よがしは総じて美しい例がありません。いいものを控え目にして、いい工事をするのがいいのす。いい工事はその大方が壁や床や天井に隠れてしまいます。和室においても、どうだとばかり(節があったり色違いとりどりであるのに)ふんだんに木肌を見せたりせず、最大限を省き必要なもののみを色合いの揃ったいい材を用いてさりげなく見せるのが概して美しいものです。
 必要以上のものは美を造りません。店舗建築はともかく、飾りや
豪華主義も控える方がよろしい。背伸びしたままでいるのは疲れます。美を感じるのは心ですること。心安らかにしている方が美しいのです。ただし、建築の空間に写真や優勝カップなどを楽しく飾るのは構いません。それは建築ではなく生活ですから。

環境状況への適応
 2と相通じるところがありますが、ここでは特に環境状況への適応として地形や地形(じがた)にぴったりと馴染む構法や空間構成や外構えを有することと思ってください。地形とは、坂であるか、丘陵の頂きであるか中腹であるか、急斜面であるか、その方位。例えば、わるい
地形を利用して変化のある空間を楽しむことも可能です。
 地形(じがた)とは宅地として使用できる用地の形や接道や隣地との関係のことです。敷地から建物を建てた残りが「残地」ということではなく、全ての
地面が隅々まで意味を持ち、生かされているのがよいわけです。
 近隣風景ともなじんでいるのがよいでしょう。かと言って近隣の宅地の風景が必ずしも良好なものでないことがあります。レベルがどうも好ましくないと感じるときは、何も低いレベルに合わせることはありません。自然や地形の持ち味だけを大事に、優れた建築を造ることも時に必要です。

意の込もった造り
 何事も愛情をもたずして美しいものができたためしはありません。家も花も衣裳も意を込めてするからこそ、ついには美しいものになるというものでしょう。美しくしようと努力をせずに美しい家はできません。美しい家を造ろうと思うなら、そのつもりで一生懸命にやる。不恰好があれば何とかして修正するのがいい。空間の各部の比例はよいか、材と材の接合やディテール(細部)は美しいか、などに意を配ります。
 建築に、
好ましい思想と美しい意識の流儀があったときに、美しい家ができる可能性が生まれます。丁寧に真剣に心を込めて造るのでなければ美しい家が生まれることはありません。華道における「花」に同じ、茶の湯における「茶」に同じ、作庭における「庭」に同じです。

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