「上手い」の不快
TVの画面でさえ、時々みかけるようになった。 「下手」はへた「上手」はじょうずとだけ読みたい。下手の対語を上手、「まずい」の対語を「うまい」と言ったらどうか。形容詞の方にはちゃんと「拙い」と「巧い」や、「不味い」と「旨い」なる字が折角ある。
どうも、元々は技術の巧みさをいう「うまい」という言語はなく、味覚の「甘(うま)い」や「旨い」という言葉があったようだ。技芸の「巧み・上手」は元々あったのに、味覚の「旨い」を褒め言葉として使うようになったらしい。そこへ「上手い」と当てた無粋者がいたものらしい。 すこし古参の分厚い広辞林には「上手い(じょうずい?)」を「うまい」なんて読ませる言葉は載せていない。「上手い」がいいのなら「下手い」と言ってもいいじゃないか、実に美しくない。
「あんたみたく、すっごい大きい犬」… 形容詞あるいは連体修飾語が名詞を飾るのだし、形容詞(用言)を飾るのは副詞あるいは連用修飾語だ。「すごく大きい」と言って欲しいし、若者の崩した不良じみた言語を媚迎して掲げる辞書は軽薄で、はしたない。辞書はもっと泰然としていて欲しいものだ。日本語はどんどん下品な言語に変わりつつある。
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